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海外ニュースの紹介ブログ。映画好き。

紙幣の原料に動物!?思想信条が社会をつくる。

インドに行って驚いた。ベジタリアンが非常に多い。
調べたところ、インド人の約30%がベジタリアンなのだそうだ。
幾つかの州においてはベジタリアンの人口比率が95%を超えるという。
これは主に宗教的な理由による。
聖地がある地域では肉が食えなくてはじめのうちは少し困惑した。
聖地にも場所によってはなんとファーストフード店があるのだが、サブウェイもマックもピザハットも肉なしである。
欧米の企業が流入しても、ここまで現地の食文化に合わせて適応しているのには瞠目した。

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ベジマックマフィン。パティは練ったとうもろこし粉にホウレン草のペーストを混ぜたもの。
おいしくはない。

ほとんど全ての既製品にはベジマークがついている。
列車や飛行機でも機内食では必ずベジかノンベジか聞かれる。

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出典:Is masala maggi vegetarian or non-vegetarian? - Quora

私が訪れたのは黄金寺院があるシーク教の聖地アムリトサルだ。
シーク教徒とは、インドの人口比では2%程だが、全部で3000万人もいて、世界で5番目に教徒が多い宗教だ。wikipedia:シク教
ターバンを巻いてひげを生やし短刀を腰にぶら下げた人々をイメージしていただけると分かりやすい。それは彼らの伝統的な衣装だ。

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ちなみに、有名なシーク教徒にはプロレスラーのタイガージェットシンがいる。
シーク教ヒンドゥー教カビール派とイスラム教の影響により誕生した宗教だ。
どちらもカースト制を否定し、人々の平等を説いている。
総本山の黄金寺院には大きな食堂があり、そこでは彼らの思想を実践している。
「聖者たちの食卓」という黄金寺院の食堂を取材したドキュメンタリー映画がある。

内容(「キネマ旬報社」データベースより)
インドの寺院で500年以上続く無料食堂の舞台裏に迫るドキュメンタリー。巡礼者らに毎日10万食分の豆カレーを提供するハリマンディル・サーヒブ(黄金寺院)。宗教も人種も関係なく誰もが平等にお腹を満たすことができる「聖なるキッチン」を映し出す。
出典:amazon.co.jp

食堂では、年齢や性別、肌の色、宗教、社会的地位に関わらず、全ての人々が一堂に会し食事をする。
これはヒンドゥー教徒カーストの異なる人同士で食事を共にしない事と対照的な習わしだ。
なんと、毎日10万食の豆カレーを無料で提供しており、その全てはボランティアでまかなわれている。しかも、この伝統が500年も続いているという。*1

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人生で大切とする軸を持ち、それを誇りに生きている人達がとても格好良かった。
社会の在り方とはそこに暮らす人々の意識に沿ったものでなくてはならないだろう。

個々人の価値観が社会を作り上げていると改めて感じさせるニュースがあった。

イングランド銀行が新しく発行したポリマー紙幣に使っている獣脂をパーム油に変更した。”
(記事タイトル意訳)

イギリスでは今、従来の紙のお札からポリマー紙幣に変更している真っ最中だ。
ポリマー紙幣は1988年に最初にオーストラリアでつくられた。
従来使用される原料の麻や綿では一般人でも調達しやすいため、偽造紙幣防止の観点から導入された。
その後、ポリマー紙幣の方が生産コストは割高だが、長持ちするため結果的に安上がりになる利点から世界各国で導入が進んだ。
イギリスでは2016年に5ポンド札と10ポンド札が発行され、続いてこの後20ポンド札も発行するようだ。

しかし、この度ポリマー紙幣に動物から抽出した脂が使われていることが問題となっている。
ポリマー紙幣に使われる獣脂は主にステアリン酸*2を利用するために用いられており、紙幣の帯電防止のために使われているという。

これに対してベジタリアンヴィーガンが抗議の声をあげ、請願書に8万人以上がサインした。
イギリスは宗教上の理由や、アニマルライツの観点からベジタリアンが多く、人口の8パーセントがベジタリアンだという。
なかでもヴィーガンと呼ばれる絶対菜食主義の人々は、一切の動物性製品を身に着けないハードコアな人々だ。彼らは革靴やベルトも合皮製品を使うし、化粧品や洗剤も動物実験フリーなものを選択する。
そういった人々の意向に沿う形で、イングランド銀行は獣脂の代わりにパーム油を使うことを決定した。*3
パーム油に変更するとさらに1.7%のコスト増になるが、10年以上で25~30頭分の家畜を使わずに済むという。

流石に、数十頭の家畜のために紙幣を変えるというのは行き過ぎているようにも思う。
しかし、誰もが使う事を避けられないものだからこそ、こういった反発があるのだろう。選択の自由をそもそも奪われることになるからだ。
日本でも信教や思想の自由が認められているが、そういった違いを互いに認め合うという感覚が欠如していると感じる事は多い。

多様性で生じる問題を乗り越えることで社会は進歩していく。
個人のライフスタイルや信条を表現していくことは、活力ある社会を作っていくためには必要だ。
より多くの人が自分らしく生きれるようになったら面白い。

*1:ちなみに、シーク教徒は厳密には菜食主義ではないが聖地では肉を食べない

*2:ステアリン酸はろうそくや石鹸等にも含まれる高級脂肪酸

*3:現在、20ポンド札が最もよく偽造されている紙幣でなるべく早くポリマー紙幣に変更したいが、今回の事態を受けて、あと4~5年は発行までにかかるとされる。
なお、現行の獣脂を含む5ポンド札と、今年発行予定ですでに準備段階に入っている10ポンド札はこのまましばらく流通させ、徐々に変更していくという。