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世界は狂っているから面白い

海外ニュースの紹介ブログ。映画好き。

マイケルムーアの「トランプランド」を観た。なぜヒラリーが負けたのかがよくわかった!

マイケルムーアの「トランプランド」を観た。

2016年アメリカ大統領選の直前に、共和党支持者が多いオハイオ州の劇場で、党を超えた様々な支持者を集めてマイケルムーアが行ったワンマントークショーをそのまま映画にしたものだ。

Michael Moore in TrumpLand

Michael Moore in TrumpLand

 

 このトークショーの内容は、まずトランプ支持者についての共感を述べ、それを踏まえた上でヒラリーへの投票を呼びかけるという構成になっている。

マイケルムーア自身は、自分の属性は完全にトランプを支持する怒れる白人たちと同じであるため、彼らの気持ちがよくわかるという。
ムーアは元々、自動車産業の町ミシガン州出身で父はGMの組立工だった。GMが地元の町フリントの工場を閉鎖して移転し、その結果、多くの中産階級貧困層へ転落していくという状況を目の当たりにして映画を撮ったのがキャリアのスタートだ。
なので、選挙演説でトランプがフォードの経営陣に対して、ミシガン州から自動車工場をメキシコに移転させたら35%の関税をかける、と発言した事を受けてとても驚愕したという。
いままでそんなことを発言できる政治家はどこにも存在しなかったからだ。
トランプ支持者の多くは差別主義者ではないし、善良な人々だとムーアはいう。
彼らは、現状に対する切実な怒りや不満を抱え、今までの政治にノーを突き付ける意味でトランプを支持するという。

しかし、ムーアはそれを待ってくれと呼びかける。
君たちの気持ちはよくわかるが、ヒラリーが大統領になった方が子供の教育向上や銃犯罪の防止、医療制度の拡充等、アメリカにとっては良いことが起こると言う。
ヒラリーはずっとガラスの天井と戦い続けている。ヒラリーの事が嫌いなのは良くわかる。旧態依然とした政治家の象徴だ。
それでも、嫌いだと思いながらでいいからヒラリーに投票して欲しい、と演説を締めくくっている。

結果は、多くの中西部、南部の支持を獲得しトランプ新大統領が誕生した。

ヒラリー・クリントンは大統領選を総括して、コミーFIB長官とロシアのプーチン大統領のせいで大統領選挙に負けたと発言している。

・投票日直前に、コミーFBI長官によって私用メール問題の捜査再開が発表された件。*1

 ・ドナルド・トランプ勝利を有利にするためロシアがサイバー攻撃を仕掛け、クリントン陣営の内部メールが暴露された件。*2

これに対してツイッター上の反応では、ヒラリーはわかってない、単に多くの中間層の心を捉えられなかったせいだという発言が目立った。

上記の2つも敗因の一部なのかもしれないが、なぜこれらの中間層の人々の支持を得ることが出来なかったのか。そして、なぜ今なお嫌われているのだろうか。

トランプを支持した多くの白人中間層とヒラリー敗北のわけ

マイケルムーアが語ったような典型的なトランプ支持者たちは長年の不遇により、反エリート、反グローバリズム、反リベラルという共通点があった。
彼らは困窮しており、白人である特権を意識できないために被害者意識があり、社会福祉や平等の名のもとの「マイノリティの優遇」に強い反発を覚える傾向があった。
しかし、それをあからさまに批判すると差別主義者と非難され、逆に人格を否定されてしまうという構造があった。そのため、公に本音を吐露することが出来なかった。
このように、彼らは「正しさ」に押し潰されて息苦しさを感じる状況にあったため、PC(ポリティカル・コレクトネス)を無視したトランプの発言に強く惹きつけられたのだ。*3

そのため、彼ら自身がそれほど差別的ではないのにも関わらず、トランプが過激な差別的発言を繰り返し、リベラルがそれに「正しく」反撃すればするほどトランプ支持が強まっていくという状況が生まれた。
そして、ハリウッドのセレブや有名ミュージシャンらがヒラリーの応援演説をすればするほど、取り残された人々は冷めていった。

また、オバマはグローバルな出自でエリートの黒人というまさに「正しさ」の象徴であった。
続くヒラリーが女性初の大統領になり、銃規制をし教育に力を入れグローバルな発展を約束することは、直接彼らを救ってくれる解決策ではなかった。
彼らは自分たちを脅かす「不法移民」を取り締まり、愛する国を危険にさらす「テロリスト」を入国させず、「正しさ」ではなく自分たちのために対応してくれるリーダーが必要だった。
もうこれ以上「正しさ」のもと自分たちが取り残されるのは嫌だったのだ。
本来なら、これらの欲求に答えるのはもっと別の人物だったのかもしれないが、彼らの望むものを提示できた人間は他にいなかった。

ヒラリーが「正しい」総括をすればするほど、彼らの心は離れていく。

*1:コミー氏がそういった内容の書簡を連邦議会に送ったという報道:クリントン氏の私用メール問題、FBIが再捜査 トランプ氏「国民はちゃんと分かっていた」

*2:「プーチン大統領がサイバー攻撃指示」情報機関が報告書を公表、トランプ氏も認識

*3:なお、一部の支持者は過激化し、ネオナチやKKKのような白人至上主義的イデオロギーを掲げる極右団体がトランプ支持を表明した。また、オルタナ右翼という従来の保守には納まらない新たな一派も出現した。