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「T2 トレインスポッティング」を観た。「未来を選べ」がおっさんの泣き言になっていた。

「T2 トレインスポッティング」を観た。

 96年の映画「トレインスポッティング」の20年後を描いた続編だ。

 トレインスポッティングスコットランドエディンバラという町に住む自堕落なヘロイン中毒の若者たちを描いた群像劇である。
中でも、ユアンマクレガー演じるレントンが発する「未来を選べ」というフレーズが有名で、多くの人々の心を打った。

「人生を選べ。仕事を選べ、キャリアを選べ、家族を選べ、くそったれな大型テレビを選べ。洗濯機を、車を、CDプレーヤーを選べ、電動缶オープナーを選べ、健康を、低コレステロールを選べ、保険を選べ。友人を選べ。未来を選べ。 それが「豊かな人生」だ。だが俺はご免だ。豊かな人生なんか興味ない。理由なんてない。ヘロインだけがある。」

資本主義的な価値観に生きる意味を見出せない主人公が「何も選ばない」という選択肢としてヘロインを選ぶという究極の皮肉がこの作品の肝だった。
ラストシーンはこんなごみ溜めにいちゃダメだという一心でヤク断ちしてそこから抜け出すのだが、彼は別に新しい人生の価値を手にした訳ではなかった。
つまり、レントンが最後に「豊かな人生」を選んだのも単なる皮肉の裏返しである。
No Futureの精神を体現したような作品で、明るくポップにどうしようもない絶望が描かれている。

ガーディアンに「T2 トレインスポッティング」の批評記事があった。

この記事では、トレインスポッティングの未来を選べというフレーズがその続編の「T2」でも引用されているが、それが現代でも通用するかについて書いてある。

今回の続編でもレントンは「未来を選べ」フレーズを披露するのだが、この記事によるとそれが時代に乗り遅れたおっさんの泣き言にしか聞こえないという。

レストランのシーンで、レントンブルガリア人のセックスワーカーであるヴェロニカに「生き方を選べ。フェイスブックツイッター、インスタグラムを選べ、どこかの誰かが気にしてくれるのを期待して・・」「みんな何かの中毒者だ、何かに依存して生きている」云々と「未来を選べ」フレーズを披露する。
このシーンは予告編でも使われていて、映画のハイライトの一つとなっている。
しかし、白人特権の中年親父の泣き言を聞かされる彼女が可哀そうだというのが記者の意見だ。

私はこのシーンは一種のファンサービスだと思うし、意識的に無理やりミレニアル世代のマテリアルを取り入れて、「未来を選べ」をなぞっているだけで大した意味などないと感じる。
そもそもエポックメイキングな作品の続編なんて前作以上にうまくいくはずはないので、それなりにファンにおもねったサービスシーンで構成するのが常套手段だ。
しかし、皮肉たっぷりの時代精神を体現していた感性の鋭い作品でそれをやってしまうと、懐古趣味にしか感じず失望する人は多いだろう。
だが、今回の「T2」はちゃんとそれを自虐的なコメディにできている点が非常に好印象だ。
レントンとシックボーイはまるで恋人のように過去のサッカー観戦で盛り上がって、昔の話しかしないし、ベグビーは刑務所に入っているし、スパッドは相変わらずヘロイン中毒だし、みな時代に取り残されていてダサくて悲壮感たっぷりだ。
「未来を選べ」のフレーズは空振りして、結局何一つ手にすることが出来ず、悲惨な結末が待っていたという嫌な話である。
「T2 トレインスポッティング」は自虐に徹していてコメディ要素たっぷりで、一番いい形で作れた続編だと思う。
個人的にはセックス・ピストルズの再結成ライブを彷彿とさせる。

特にラストシーンで流れるIggy popの「Lust for life」のリミックスにはグッと来た。 

Ost: Trainspotting 2

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トレインスポッティング〔新版〕 (ハヤカワ文庫NV)

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