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オルト右翼はファイトクラブ!?ニヒリストたちのバイブル。

前回「T2 トレインスポッティング」について書かれたガーディアンの批評記事を紹介したが、その中でトレインスポッティングと対をなす作品としてファイトクラブについても言及されていた。

 ファイトクラブトレインスポッティングの3年後の1999年に公開された映画で、これもまた資本主義経済への批判が基盤となっている映画でエポックメイキングとなった作品だ。

レントンの「未来を選べ」にある「豊かな人生」そのものの生活を送るファイトクラブの主人公は、イケアのカタログに夢中な資本主義経済の奴隷で、生きてる実感を得られず不眠症を患っているという設定だ。ネタばれ全開であらすじをまとめてみる。
彼は夜な夜な末期がん患者の互助ミーティングに参加し、悲惨な状態に置かれた人々の話を聞き生の実感を撫ぜることで自己を保っていた。
しかし、次第に彼はタイラー・ダーデンという理想化した自己を投影したキャラクターを創造し、生の実感を取り戻すために週末バーの地下に集まって生身で殴り合う秘密組織ファイトクラブを結成する。
ファイトクラブは次第に過激になっていき、タイラー・ダーデンは破壊行為を扇動し、しまいにはビル爆破テロを企てるようになるという話だ。

ファイトクラブはしばしばナチズム、マチズモ、ミソジニー女性嫌悪)というキーワードでバッシングをうけた。
人間の脂肪で石鹸をつくるという発想はナチスで実際に行われていた事を彷彿とさせるし、元々ナチスが開発したフォレストワーゲン(ビートル)がファミリーカーになっているとして破壊するシーンもある。

これに関連して、ファイトクラブは現実のものになりつつあるという記事があった。

この記事では、ファイトクラブオルト右翼の類似性について述べている。

オルト右翼とはそもそも何だろうか。
オルタナティブ右翼、つまりこれまでの右翼の範疇に入りきらない新しい代替的な思想をもった右翼の総称で、特にこれといった特定の思想を持つグループではないという。
基本的には差別主義(反移民、反イスラム反ユダヤ主義)で女性蔑視が根底にあり、反宗教である点が共通しているそうだ。
4chan*1とのつながりも深く、ペペというカエルのキャラを差別的なシンボルとして多用し、リアルではあまり活動せず、組織化はされておらず、ネトウヨとの類似点も指摘されるという。
反グローバリズム、反エスタブリッシュメントの白人ナショナリストが多く、主流となっている価値観を全く信じておらず、徹底的にニヒリズムであり、全てが半分ジョークであるそうだ。この感覚はファイトクラブと共通する点でもあると思う。

この記事では一連のオルト右翼の活動とファイトクラブに出てきたアイディアとの類似点を指摘している。

Access Accepted第440回:北米ゲーム業界を揺るがす“ゲーマーゲート”問題 - 4Gamer.net

小児性愛を擁護する発言流出 オルタナ右翼「ブライトバート」幹部マイロ・ヤノプルス氏辞任、出版も中止

これらの事件はミソジニー(女性蔑視)とレイシズム(人種差別)が問題の争点となっている。

オルト右翼にはファイトクラブのファンが多いという。
あるオルト右翼の覆面ブロガーのハンドルネームはタイラー・ダーデンだったそうだ。

覆面ブロガーの告白、そして「オルタナ右翼」とは何なのか|WIRED.jp

また、リチャード・B・スペンサーというオルト右翼の名付け親が創刊している「Radix Journal」というネットマガジンがあるが、ここに記事を投稿しているハンニバル・ベイトマン*2という著者によるGENERATION ALT-RIGHTという記事ではファイトクラブのセリフの引用がなされている。

ガーディアンの筆者によると、このような現象は作品の読み違いがまねいてしまっているという。
タイラー・ダーデンはヒーローではなく、より良い世界を作ろうとしているわけでもないことが、映画だけでなく小説版を読めばよくわかるという。
小説では、ファイトクラブは結局ただの盲信的な犯罪集団になってしまうという落とし穴が描かれているそうだ。
作者チャック・パラニュークは良い物語が良い世界を作ると明言しているが、ファイトクラブは意図したものとは違った形で解釈されていると筆者は述べている。

しかし、オルト右翼たちはアンチのニヒリストだから、たぶん世の中を良くしようなんてこれっぽちも思ってないだろうと思うし、この記事を読む限り永遠に平行線を辿る気がする。
現状に不満を持つニヒリストたちが破壊的な思想を持って面白がっている状況なので、そこに真面目に真っ向から立ち向かっちゃダメだと思う。
そういった思想が出てくる背景をしっかりと見極めるべきで、正しさで応じようとしても暖簾に腕押しになるだけだ。
まあ、とりあえずファイトクラブは映画版しか観たことがなかったので、今度小説を読んでみようと思う。 

 

*1:アメリカ版の2ちゃんねる

*2:羊たちの沈黙ハンニバル・レクターとアメリカンサイコのパトリック・ベイトマンから引用